昨日、NHKのドキュメンタリーの追跡A TO Zというのを見た。
「安売り競争は何をもたらすのか?」というタイトルで、いわゆるデフレスパイラルを解説する内容だった。
http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/file/list/091128.html
特に槍玉に挙がっていたのはスーパーのプライベートブランド(PB)商品で、価格破壊はこれが主因だというスタンスだった。まあ、間違ってはいないと思う。PBにつられてナショナルブランドも価格を下げざるを得なかったし。
番組ではPBの商品作りについて取材していた。本来は国産原料で作っていた製麺屋が大手スーパーのPBを始めて、価格を下げるために工程を見直し、人員削減をし、社員の給料も下げてなんとか、かつかつだったところを、スーパーに販売協力金を吸い上げられて赤字になったみたいなことを取材していた。恨み節ではないが、コレが現実だ!みたいな。
パックタイプのドリップコーヒーを1杯20円以下で販売できるようにするために、スーパーのPB開発担当者がメーカーに直に掛け合い、コストを下げさせて、さらに豆の増量を要請する。メーカー側は「当社の努力で何とかします」と言う。
番組では一切言わなかったが、「当社の努力」って、給料を下げたり、工程を見直すだけじゃないんじゃないか?「国産の原料にこだわっていた製麺所でした」と過去形で暗に語っていたが、「原材料の見直し」も入っているだろうと思われる。
その結果、値頃感も安くなって、それに大手が圧迫されて、大手も価格で対応するために(小回りがきかないから手を付けやすい原材料費を圧縮して)安価で質の劣る材料を使用してもの作りを行う。そのうちに、良い材料を使ったおいしいものが手に入らなくなってくる。(もしくはもっと割高になる)というスパイラルも同時に発生する。
それが消費者の望んでいることなんだろうか?
消費者の要求を最大限に満たしたことになるのだろうか?
番組ではデフレスパイラルについて言いたかったからその部分については何も言及しなかったが、これも実は大きな問題だと思う。
この場合、一番の問題は商人だと思う。努力の方向性が違うのだ。
本来なら、商人は「この商品がこの価格なのは生産者がこの品質と味を維持するためにこういう努力をしているんですよ」「この商品がこの価格なのは~だからです」という説明をお客様に伝えなければいけないと思う。
それが納得できれば多少高くても買うという人はまだ沢山いると思うのだ。
良いものを良いと認知できないお客様が多いのなら、(少々不遜な言い方だけど)お客様を教育して、本当に良いものを伝えるのも商人の役割だと思うのだ。
だって、僕ら知らないんですよ、全然。A社のサラダドレッシングとB社のサラダドレッシングの違いを50円くらいの価格差があったら、知らなかったら安い方を買うけど、知り合いから「A社の方が全然うまいよ」と言われたら何割かの人が50円高くても買うんですよ。もし、お店の人と私たちが良い関係を築いていたら、同じように50円高くても言われちゃったら買うと思うんですよ。でもお店の人はほとんど教えてくれないんですよ。じゃあ、50円安いほうがいいやとなるんですよ。
確かにただ安ければ良いという人は増えているのかもしれない。
そして、物理的に安いものしか買えないという人も増えているのかもしれない。
でも安いということは何かを引き替えに安くなっていることが多いのも事実。そして、それが従業員の給料だけではなく、質や安全を引き替えにしている場合もあると思うのだ。
それらをお客様に伝える努力をすること無しに、ただ「消費者が安いのを望んでいるからどんな手段でもいいから安いものを作れ」というのは商人としていかがなものかと、零細商人の私は思ってしまう。
もちろん、PB作りに携わる人の仕事をけなしている訳ではないですよ。
彼らも信念をもって仕事に取り組んでいるのならそれはそれで良いと思う。ただ、そういう疑問を持たれないような仕事をして欲しいし、画面上ではそういう疑問しか浮かばなかったのは否めないのです。
こういうのを見ると、きちんと自分の扱っている商品を説明できるプロのお店というのがどんどん無くなっているから、こういうことになっているんだろうなあと暗い気分になってしまいます。はあ…。
チーズケーキ屋です。
稚拙な頭でなんですが・・・
PBっていつ頃から目立ってきたのかなぁ。
私の記憶に限っての事ですが、今でもありますがスーパー「CGC」ってのがありますよね。中学生だった当時「バッタもん?」と疑ってかかってたんですけど、コーヒー用の粉末ミルクが「あれっ?この味・・・」と製造者名のみたら「森永乳業」と書かれてあったのです。そう、中身は「クリープ」だったわけですよ!
あと別のPBですが、「みりん」の製造者名が「キッコーマン」、つまり中身は「万上本みりん」だったりと、一概に価格を抑える為に品質を落としたモノじゃないんだなという認識はありました。(ちょっとは違ってたのかなぁ?)
最近思うんです。「安ければ買うんだ!?」と。
消費者心理としては分からないでもないですが、安いモノに対する消費が半端じゃ無い様な気がしてならない。ホントに「不況」?
車だっていくらエコカー減税だの補助金だのがあっても、おいそれと買える金額じゃないと思うし、だいたいモノが飽和している所に来て無理矢理消費を掘り起こそうとして、そのうち「安くてもいらない!」になったらそれこそ目も当てられない状況になるのでは・・・と変な心配をしています。
でも、「チーズケーキいらない!」って言わないでね。(笑)
makky
私の個人的な意見ですが、ものが安くなるというのは決して問題ではないと思うのです。
それを消費者の皆さんが望んでいるというのならそれに応えるのは商人として正解だと思いますし。私も消費者の一人として安く買えるというのは不快になることは無いです。
ただし安くするためには失うものがあり、それが中、長期的に大きな損失になるというのなら別問題です。
目先の安さに吊られて、長い目で見て安全性が脅かされたり、ちゃんとした商品が二度と手に入らなくなったりしたらイヤだなあと。
そして、その可能性を商売する側は一切情報として提供せず、今目の前の利益だけを追求しているのだとしたら、それは消費者にとって良い商人なんでしょうか?
気付いていないだけで、既にもう手に入りづらくなっている「きちんとした職人の手によるきちんとした商品」なんかはいろんな分野で存在しているわけです。
安さだけを求めて、ある時振り返ると、「ああ、あの昔の味はもう食べられなくなったなあ」となるのが怖いのです。
一時期豆腐でそうなりかけましたよね。
男前豆腐店とかがんばっている会社のおかげでなんとかちゃんとした豆腐も食べられるけど、良い豆腐は200~300円はかかるということを知らしめてくれました。
もし、高いものが売れないからとあきらめていたら、発泡性の高いすかすかの豆腐が当たり前の状況になっていた訳で、それは実は怖いことなんじゃないかなあと思うのです。
話が長くなるなあ…